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事務所を移動(夜逃げ)したことによって、仕事は激減した。(パソコンの復旧ができないし)更にキャバクラ三昧の豪遊がたたって、
金もすっかり底をついていた。
みんなそれぞれ昼は、マンガ喫茶、ボラ釣り、俳句を読む、などして細々と時間を潰した。そして夜は決まって安酒を煽って酒盛りとなった。
「あー!キャバクラ行きてー!」
「誰か働きなよ!」
「んじゃテメー働けよ! そういやージャッキー、おめー貯金あんだろ?」
「全部、国の家族に送金しちゃった」
と、責任の擦り合いと堂々巡りの中、1本の電話が『君が代』の着メロとともに、長谷川のケータイに掛かってきた。仕事の依頼らしかった。
「じゃ、明日の午後1時に…」
と、新しい事務所の住所を伝え、電話を切った。
「なんか女だったよ」
「どーせ、また冷やかしかなんかじゃねーの?」
「そんなもんあてになんねーから、長谷川、オメーまた現場戻れよ! あの親方に気に入られてたじゃねーか?」
「嫌だよ!絶対!」
長谷川は、強い口調で否定した。
「なんで?」
「だって、あのオヤジ、ホモだったんだよ!」
一同シーンとしてから
「まぁ、それ詳しく聞かせてよ」
とジャッキーが言った。そしてみんな身を乗り出した。
「みんなが辞めてから、オレしばらく親方と2人で現場やってただろう? んで仕事終わると必ずメシ連れてってくれて、
酒飲ましてくれるんだよ。オレも最初は単なる気のイイオヤジだなー、ぐらいに思ってて、タダ飯食えて、こりゃいいや!
なんて思ってたんだー。とこらがどっこい、そーは問屋が卸さないって感じだったかな、やっぱし」
「ウルセー!さっさと話せ!」
「…。そんである晩、現場終わっておでん屋行って、そん時オレ調子に乗って飲みすぎちゃってさぁ。
大根食ってるとこまでは、なんとなく覚えてるんだけど…。こう、なんてゆーか…。っつーか、
黄色いカラシがピリッと効いて、ダシを思う存分吸ったホクホクの…」
「テメー!ぶっ殺すぞ!」
「あっ、ごめん。んで目覚めたら、変な紫色の部屋に全裸でいたんだよ。ベッドもカーテンも壁も全部紫。笑うでしょ?
んで、どーやらそこがジジイのアパートらしくてさぁ。そんでジジイ、変なSMのメガネみたいのあるじゃん?あれ掛けて
(マイ・スィート・ハニー)とか言って、サルマタ一丁で鼻息荒くして体擦りつけてんだよ!オレにっ! オレびびってジジイ、
ハリ倒して財布盗って服掴んでソッコー逃げてきたよ…」
「んでオマエやられたの?」
「それが自分でもよくわかんないんだよなぁ…」
「ケツ、どーよ?」
「別に普通だよ!」
という興味深い話も終わり、例によってみんな酔い潰れ、眠りこけてしまった。
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