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翌日、午後1時を少し回ったところで女が現れた。そこに立っていたのは、なんとあの巨乳アイドルだった。
しばらくボォーとその乳に見とれていたかったが、ふと我に返りオレは言った。
「まぁ、寒いから入って入って…」
そして、お茶を出す間もなく、巨乳は一気に喋り出した。
掻い摘んでいうとこんな感じだ。
会社が気に食わないとか、人間扱いされていないとか、給料が少ないとか、全く休めず睡眠時間が3時間とか、
気持ち悪いファンが多くて困る!とか、あの司会者はじつはヅラだ!とか、週刊誌のカメラが鬱陶しいとか、
胸がデカすぎて肩コリがひどい!とか、タバコの税金上げるな!とか、カルティエのネックレスはイカす!とか、
ケンタッキーフライドチキンの骨は食えるとか…
「わかった、わかった。で?ウチらに何しろつーの?」
「だから今言った奴らを痛めつけて欲しいのよ!」
「カーネル・サンダース?」
「アンタ人の話、聞いてた?」
「……」
「だ、か、らぁー…」
と巨乳は言って、好き勝手にスキャンダルをでっち上げた出版社、そして自分の事務所の住所とそこの社長の写真と、
しつこい追っかけの写真付きリストと、デビュー間もない頃に散々いびられた先輩の写真を机に叩きつけた。
(その先輩というのは、一昔前に一斉を風靡した巨乳アイドルだった)
そーいえば松竹梅があったな!と腹の中でオレは思った。
「まず、なんちゅーか…、ウチにはコース別の値段設定やサービスがあるんだけど…。まぁ、これも仕事つーか…」
「もうー、そんなことアンタ達の好きにしてよ! とにかくメチャクチャに痛めつけてやってほしいの!
もうあたしはこの世界から一刻も早く足を洗いたくてしょうがないんだから! そしてその前に、いいことも悪いことも、
きっちり自分で借りは返すつもり」
巨乳は、なかなかの迫真の演技を見せた。(これ毎回やってたら、女優への路線変更も可能かな?)とそこで長谷川が口を挟んだ。
「わかりました。では、まず手付といってはなんですが、こちらとしてもイロイロと調査やら準備やらに、時間も費用も掛かりますので…」
巨乳はおもむろに、プラダの財布をヴィトンのバックから取り出し
「これで足りる?」
と言って、札束をボンッとテーブルの上に置いた。
「結構でございます!」
「じゃー、よろしくね」
そして、ケータイの番号を置いて、マネージャーが運転するアウディーに乗り込んで、さっさと帰って行った。
札束を数えると72万円あった。手付で72万!これはもう、やるしかないっしょ!
ということで我々は、その後キャバクラでハメを外したのは、いうまでも無い。
何日かが経っていた。荒井がニヤニヤ笑っている。
「なんだよ?気持ち悪りーな」
「聞きたい?」
「聞きたかねーよ!テメーが言いてーんだろ?」
「実はさぁ、昨日ケータイの出会い系で知り合ったコとヤッちゃってさー。んで、またそのコがかわいくてさー!いやー感謝!感謝!」
と、『北の国から』の田中邦衛の真似をしながら言った。
「何が出会い系だよ。よーはテレクラだろ?」
と言いつつも、ものスゴ〜ク羨ましかった。オレは今まで散々ケータイを否定してきたが、
ゲンキンなもので気が付けばケータイ屋で“0円”の機種を物色していた。
早速、その出会い系とやらの1つに登録してみた。なんだかイロイロめんどクサかった。しかし登録後、すぐにメール受信があった。
【今、お金持ってる?】
まぁ最初だし、いちおうすぐ返信しとくか。
【金?そんなないよ】
【いくらなら持ってる?】
ったく、なんてガメツイ女だ!と思いつつ、オレは更に送信した。
【8千円】
【じゃーフェラまでね】
なんだかウンザリしてきた。“ハイッ!消えた!”とキンキン・ケロンパの声がした。(するわけねぇーだろ)そして次の受信があった。
【今、ヒマ?】
【めちゃヒマ。誰似?】
【キョンキョン。それより今から会えない?】
【別にいいよ】
いいな!簡単で! やっぱ、こーでなくちゃ!
そして、待ち合わせの駅前で待っていると、肩をポンポンと叩かれた。そこにはキョンキョンの“キョ”の字も無いブスが立っていた。
だが、すぐ帰るのはちょっと失礼な気がしないでもないし、ガマンしてヤレないこともないかもな…と自分にいいきかせ、
デニーズに入って紅茶を飲んだ。しかし、いざ面と向かうと、やっぱしというか当然のようにテンションもモチベーションも息子も萎えていった。
デニーズを出て公園をブラブラしていると、急に女が言った。
「今日は私の誕生日なの」
「へー、そりゃー、おめでとー」
やれやれ誰も祝ってくれないからオレがその代役って訳か?
「私は火星人を信じるケド、アナタ信じる?」
「いやー、特には…」
いきなり火星人かよ? 別に宇宙人とか幽霊とかUFOとか神さまとか、いよーがいまいが、どーでもいいよ、んなこと。
「ほらアタシって、もともと霊感強い人でしょ…」
あー勘弁してくれー!もう限界だ!という訳で…
「あっ!電話だ!」
と言ってケータイを掴む。
「ハイ!もしもし。何!佐藤がか?あのバカ! で、いくら損したんだ? 5千万!? だから売るなって言っただろう!
しょーがねーな! とにかく今からそっち行くから、チッ!」
すかさず、無理やり敏腕証券マンに成りきって、その火星人のキョンキョンから逃げ帰ってきた。
我ながら、お粗末な演技だなーと思い、ほくそえんで帰ってくると、荒井に触発されてからかなのか、ジャッキーと長谷川も、
ドカチン上がりのゴツイ指先で必死でメールを打っていた。
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