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汚ない中華料理屋で、ビールを飲みながらレバニラを摘んでいると、モニターのニュース・キャスターが話し始めた。
要は、オレたちが拉致して放り捨てたあの“先輩”が凍死したらしかった。チャンネルを変えてみても、
どの局もそのネタでもちきりだった。 急いで会計をすませて店を出た。そしてジャッキーのアパートに帰ると、
そこは既にもぬけの空だった。そして1枚の走り書きには汚い字で
「国へ帰る。ゴッド・ブレス・ユー」
と書いてあった。
荒井のアパートに行った。長谷川が首を吊って、鼻水をダラダラ垂らしながら死んでいた。オレはすぐにケータイで巨乳に連絡をした。
「お金ならあの人にキッチリ渡したわよ! 最初500万よこせ!なんていうから、アタシ、ふざけんじゃないわよ!
っていって200万だけ払ったわ! それにアンタ達、仕事も全部終わってないじゃない!
だいたい誰が殺せなんていったのよ! ほんと、こっちこそイイ迷惑よ…」
オレは話しの途中でケータイを床に叩きつけた。粉々になった部品が部屋中にふっ飛んだ。
結局、荒井のクソ野郎は巨乳からの報酬を独り占めして、トンズラしたようだった。部屋を見回すと役に立ちそうな物は何も見当たらなかった。
とっさにオレは机の上にあったバイクのカギだけを掴み、表に出てエンジンを駆けた。
荒井は前から一人でちょこちょこと、みんなの金をくすねていたんだろう。それでドロンだ。やっぱり思った通りのヤツだった…。
ジャッキーも(ペルシャ絨毯やなんかで)コソコソ金を貯めていたようだった。いつもニコニコしていたが、決して心は開いてはいなかったのだろう。
長谷川のバカは、あれでケジメでも着けたつもりか? ただ、そうしたかったのか?
どっちにしても自殺なんてクソ・ナルシストのやる最悪な行為だぜ! 死にたい奴はとっととみんな死んじまえばいいんだ!
全くどいつもこいつも、なんて連中なんだ!
そんなことを考えながらバイクを走らせた。とにかく逃げなければ!
クソッ!全く逃げてばっかりだ! 戦ったって勝てやしねー。まともに働いたって、たいした金になんねー。
クソみてーな生活をやっと支えるのが関の山だ! そもそも、まともな仕事なんてありつけもしねー…。
なんだか、オレ達はウサギみてーもんだ。人畜無害なツラして、その赤い目には光線も発射せず、その牙は毒も持たず、
ニンジンとキャベツをポリポリとかじるだけ。寂しいと死ぬとかほざいて、腹を空かせるとギャーギャー泣き喚き、
たいした努力もしないナマケモノのクセに、“自分には何かできる”と何の根拠もないくせに信じている。
テメーが一番マヌケなことも知らず、散々人をバカにして、主張はするが何一つ変えられやしない。
そのくせ、いつもワガモノガオで歩く肉食動物どもにビクビクと怯え、悔しい思いをしながらも顔色をうかがい、
野原を逃げ回るしか脳の無いウサギだ。そしてオレもキサマも、情けなくて無力でノロマな亀にさえ勝てないウサギだ! 醜いウサギちゃんだ!
それなら最後の一匹になってもオレは生き残ってやる。どこまででも逃げ切ってやる。そしていつの日にか、必ず肉食動物どもの腹を噛み切って、
食い散らかしてやるんだ!
そんなことを考えながら、オレは暗い国道をひた走った。
待てよ? そもそもここは、空中都市じゃないのか? それなら昔、荒井と二人で自転車で登った、あの細い道があるはずだ。
そこを下れば必ず出口があるんじゃないのか? オレはバイクをUターンさせ、その下り坂を必死で探した。
「たしか、ボロいステージやアイス・クリーム屋や映画館なんかがあったはずだ」
しかし、走れど走れどそんな場所は見つからなかった。そしてしばらく走っていると濃い霧の掛かった橋が見えてきた。
オレは自然とそこに吸い寄せられるように、ほとんど何も見えない霧の中をめいっぱいアクセルを拭かした。
寒さで体中の感覚が無くなっていくような気がした。
恐ろしく長い橋を渡った。濃い霧が晴れると、そこは完全に昼間の世界だった。そこは始めてきた時の空中都市のままだった。
オレはバイクを止め、しばらくそこを歩いた。外人のカップルがダルメシアンを連れて散歩をしながら愛を語り合い、
そして今日も若いカップルが式を挙げていた。 噴水の前でアイスクリーム片手に子供達が楽しそうに遊んでいた。
映画館では、いくつかのラブ・ストーリーがロードショーになっていた。
ウサギの着ぐるみが風船を一つ配ってくれた。その黄色い風船を放すと雲ひとつ無い、青い空に消えていった。
しばらくその様子をボンやりと眺めていた。
「平和だな。いったい今までオレは、なんて世界にいたんだろう…」
日差しは暖かく、太陽の光を浴びた緑は鮮やかに輝き、丘の上からは、どこまでも広がる青い海が見えた。
ほんとうに天国にいるみたいに全てが完璧だった。
「やったぜ!ついにオレは逃げきったんだ!」
ついに空中都市の入り口を見つけた。そしてゆっくりとバイクにまたがりエンジンを駆けた。
遠くに見える海のように穏やかな気持ちだった。あの時と同じ細い下り坂を降りようとしてら、
どうゆー訳かバイクともども、まっ逆さまに転落し始めた。
「なぜだ!? オレはついに逃げきったんだぞ!」
なんだか、ひどく時間が長く感じられた。オレはこのまま死んでしまうことを受け入れ始めていた。
「ああそうか…。この道を通れるのは自転車だけだったっけかな? まぁ、これも天罰か? オレの人生なんてこんなもんかもな。
イイことも悪いこともあったなー。おもしれーことも、おもしろくねーこともあったなー。
よくわからないけど、まぁ、そこそこ幸せだったのかもな…」
そんなことを考えながら、どこまでも、どこまでも落ちていった。どこまでも、どこまでも…。
(現実)
オレは仕事を辞めた。“空中都市”の物語?を書いている間にもイロイロあった。でもイイ加減愚痴るのにも飽きてきたので、
まだ途中だが止めることにする。諸君もイイ加減、聞き飽きただろ?
“現実”と“空中都市”がリンクすると思ってた人には誠に申し訳ないと思う…。
そんで今は何をしているかとゆーと、また履歴書を書いている。何か変わったことがあるとすれば、
年齢の欄に「33」と書くようになったことぐらいだろうか?
オスネコのドラえもんは、すっかり味をしめ、オレのアパートに毎日現れては、エサだけを貰いに来た。
そして食べ終わると、サッサと帰っていった。エサが無い時は決まって逆ギレした。なんだか、だんだんカワイ気が無くなってきた。
『ネコの恩返し』なんて映画があるが、きっとこいつは何にも恩返しなんかしてくれないだろう。まるで自分勝手なこのオレのように。
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